開かずの屋上
私の通う高校では、校則で屋上が立入禁止になっている。
近隣の他の学校もだいたい同様で、特におかしな校則でもないけれど、実際に校舎を見るとアレ?と思うはずだ。
なぜなら、屋上にかなり高い金網があるからだ。
明らかに頻繁に人が屋上を利用することを前提にしているかのような、囲い状の金網。
つまり、そこが開放されていた時期があるのではないか。そう考えるのが自然だ。
屋上が開放されていたことがあるのか、この学校に長く務めている先生に聞いてみた。
すると、「あるよ。15年ほど前までは普通に生徒も使ってたよ」という答えが。
それなら何故、使われなくなったのか。
まあ、ある程度想像はできる。何らかの事故か、事件でもあったんじゃないだろうか。
そのへんについても聞いてみたけど、そこまで詳しく知らないらしい。
いや、口を濁す感じだったから、あまりベラベラと人に言うべきものではないと判断して知らないことにしたのかもしれない。
そこで食い下がるのもなんだか気が引けたので、私もそれ以上突っ込んで聞くことはしなかった。
まあだいたい想像通りなのだろうと思って、その後は興味を失っていった。
ところがある日。
下校する際、特に理由もなく何となく校舎のほうを振り返り、屋上を見ると…
人がいた。しかも制服を着ている。間違いなくこの学校の男子生徒。
西日が眩しいせいで顔はよく判別できなかったけど、メガネをかけたいかにも優等生っぽい雰囲気だった。
少なくとも話したことのある相手ではない。でも何故か私はあの人を知っているような気がした。
そうこう考えているうちに男子生徒はすぐに立ち去り、姿は見えなくなった。
あれは何だったのだろうか。
校則を破って勝手に屋上に侵入した生徒なのか、それとも…
翌日、友人にそのことを話してみた。
するとあっけなく答えが帰ってきた。
「ああ、校旗がかなり色褪せてたから交換することになって、K先輩が古い校旗を回収しに行ってたんだよ」
この友人は生徒会書記。
そしてK先輩とは今の生徒会副会長。
どうりで見た事ある気がしたはずだよ!
ああ、ちょっと不思議体験を期待した自分が恥ずかしい。